我々の本を、100年遺そう。
- 「余談ですが」の項に、いくつか分かった範囲にてQ&Aを追加しました (2025.09.02)
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納本制度
納本は、国民の義務(国立国会図書館法 第25条)である。
ただし、罰則(同第25条の2;過料は小売価格の5倍)はあるものの、適用された例はおそらくない。
どういうこと?
国立国会図書館法で、発行された出版物はすべて国立国会図書館へ納めることが義務付けられている。
これは、個人発行の出版物も含まれる。
ということは、同人誌も、である。
ついでに
個人出版の場合で、発行者本人が納本すると、費用の一部が「納入出版物代償金」として国庫から支払われる。
相当数を出版したものが対象である。相当数とは、100部とのことである。
また、簡易的製本であるいわゆる「コピ本」は対象外である。
方法
正しくは「企業・団体、個人からの納本」に記載されている。
以下は、すながわの解釈による解説である。
問い合わせる
国会図書館(nouhon@ndl.go.jp)へメールで納本したい旨を申し出る。
国立国会図書館
収集書誌部 国内資料課 収集第三係 御中平素よりお世話になっております。
納本を行いたいのですが、手続きをお願いします。以下、今回お納めする書籍の情報です。
■書誌情報 # 基本的に奥付や裏表紙等に書いてある情報と合致していること
「交通系ICカードの本5 東日本総集編」
(こうつうけいあいしーかーどのほん5 ひがしにほんそうしゅうへん)
著作:すながわひろゆき 発行:Studio JamPack (出版社ではありません)# 個人出版であることを明記
発行日:2025/08/17 発行部数:800部発行 # 100部以上が納本の対象
販売価格¥900(税込) # 一般的な頒布価格(委託販売価格は認められない)
冊数:1冊 ← 2冊納本すると、東京に加えて関西でも所蔵される# 裏表紙などに価格表示が無い場合はどこで価格が確認できるか参考資料を添付する
# X(Twitter)に載せた設営完了報告で、値札が映り込んだ写真でも良い
# 委託販売や通販の価格は、手数料が上乗せされている可能性があるので根拠としては望ましくないとのこと
本体に価格表示はありません。
https://jamfunk.jp/ic/ の「お知らせ」項で「イベント頒布価格」を確認できます。
※スクリーンショットを添付しております。# 納本を申し出た者と出版物の著者が同一人物であることを説明する
奥付に発行者として「Studio JamPack」(筆者屋号)を、
著者として「すながわひろゆき」(ペンネーム)を表記しております。
メールを送ると、「出版物納入書」のPDFと送付先がもらえる。
郵送する
記入・捺印した出版物納入書、参考資料(ウェブページやXのスクショ)等、出版物を郵送する。
郵送(定形外郵便やレターパック)である。信書に対応できない宅配便やクリックポストではない。
振り込まれる
1か月ほど経って国庫納入金通知のハガキが来る。
追って振り込みがある
ね、簡単でしょ?
余談ですが
納本をするメリットって何なの?
取材を行う時や交渉を行う場合に、NDLサーチに蔵書されていることを示すと、しっかりと対応してくれるところが多い。
個人では取材を受けていなくても、事業者並みの扱いとしてくれることもよくある。
そして、100年後も本を遺してくれる。
事業者や公式は慈善団体ではないので、資料保管に限界がある。
我々オタクどもが後世に情報を遺してやらねばならないのだ!
ただし、正確に責任をもって。
書誌情報の「出版事項」に表示される「[出版地不明]」ってなんだ?
国立国会図書館へ問い合わせた。
主に出版者のいる地域を指す項目とのことで、奥付等に住所があれば表示するとのこと。
ただし、番地まで掲載されていなくても対応している。
タイトルの下にある請求番号の前半は分類コード(NDLC)だが、同人誌はどの分類になるのか。
国立国会図書館では、一般的な図書分類コード「日本十進分類法」とは別に、国立国会図書館分類表(NDLC)による分類を行っている。
NDLCコードは書誌情報タイトル下の「国立国会図書館請求記号」の前半の部分である(右図では Y93)。
Yは「児童図書・簡易整理資料・教科書・専門資料室資料・特殊資料」、93はその中で「簡易整理資料」の分野の「小冊子」を指す。
これについて国立国会図書館によると、データ作成時に多少の揺れはあるものの、同人誌の分類は以下のルールに基づくという。
- 同人誌でも他の資料同様に分類する。
- 漫画、イラスト集、文芸に関する同人誌は「Y94 その他」、成年向けの同人誌は「Y85 風俗本」として分類する。
- 48ページ以下の同人誌は、「Y93 小冊子」として分類する。
- 49ページ以上の同人誌であっても、継続している資料であれば引き続き「Y93 小冊子」として分類する。
- その後さらにページ数が増えるようであれば、そこから他の分類に切り替える可能性もある。
また、定期的に刊行される場合は「Z71 逐次刊行物 和雑誌」に分類されることがある。
- 発行回数が日刊,週刊,旬刊,半月刊,月刊,隔月刊,季刊およびこれに準ずるもの
- 年鑑,年報,終期を予定しないで巻号又は年月次をもつモノグラフシリーズ,レポート,小冊子の類及びこれに準ずる継続刊行物
とのことであり、タイトルにいわゆる年月号を入れていなくても、発行日を見て判断されているようである。とくに、シリーズ初回納本時にまとめて納本した際に、その分類が行われる事例がある。
書影(サムネイル)は表示されないのか。
NDLサーチの検索結果や、書誌情報で表示されている書影は、同人誌だと表示されていない。
国立国会図書館によると、個別で対応しておらず、データ提供も受け付けていないとのことである。
表示される条件は、「国立国会図書館デジタルコレクションのサムネイル、出版情報に含まれる書影、他機関が公開しているデジタル資料のサムネイルなど」である。(NDLサーチの5-4基本的書誌事項の表2「サムネイル・資料アイコン(1-a)」)